2012年10月31日水曜日

中国が軍事力行使する可能性:経済成長が予想よりもずっと早く減速したとき

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●並走する中国の海洋監視船(奥)と海上保安庁の巡視船(10月25日)



ウォールストリートジャーナル 2012年 10月 30日  11:39 JST
http://jp.wsj.com/World/China/node_538518?mod=WSJ3items

【オピニオン】尖閣諸島をめぐり中国が軍事力行使する可能性も

 尖閣諸島(中国名:釣魚島)をめぐる中国と日本のにらみ合いは2か月目に入った。
 今回の対立は一般的に考えられているよりも危険である。
 過去の領有権争いにおける中国の行動を思い返せば、尖閣諸島をめぐるにらみ合いには事態が一気に激化する可能性があることがわかる。

 1946年以来、中国は領土・領海をめぐって近隣諸国と23もの領有権争いを繰り広げてきた。
 そのうちの17事案は解決済みで、通常は歩み寄りによる合意で解決されている。
 とはいえ、中国は6事案で、多くの場合2度以上にわたって軍事力を行使してきた。
 尖閣諸島をめぐる難局は、こうした事案と非常に似通っている。

 まず言えるのは、 
 中国が領有権争いで軍事力を行使するのは、通常、強い軍事力を持つ隣国に対してだけ だということである。
 台湾との危機の他、インド、ロシア、ベトナム(数回)との紛争や軍事衝突がこれに含まれる。
 こうした国々には中国の領土的野心を阻止するだけの軍事力があった。
 モンゴルやネパールといった軍事力に劣る国との領有権争いでは、強い立場での交渉が可能なので、中国は軍事力の行使を控えてきた。
 近代的な海上自衛隊と大規模な海上保安庁を有する日本は今や、中国にとって最強の海軍力を持つ近隣国となっている。

 中国はまた、尖閣諸島のような沖合の島をめぐる争いで最も頻繁に軍事力を行使してきた。 
 陸続きの国境をめぐって中国が軍事力を行使したのは16の事案の5分の1程度でしかない。
 それとは対照的に、中国は島の領有権を争う4事案の半分で軍事力を行使している。
 これは、シーレーン(海上交通路)の安全保障に影響を与え、天然ガスや水産資源の宝庫である可能性もある島々にはより大きな戦略的、軍事的、経済的価値があると目されているからだ。

 加えて中国は主に、領有権を主張する地域をほとんど、あるいはまったく支配していない場合、その立場を強めるために軍事力を行使してきた。
 たとえば1988年、中国はスプラトリー諸島(中国名:南沙諸島)の一部である6つのサンゴ礁を占拠し、ベトナムと衝突した。
 中国は数十年にわたってスプラトリー諸島の領有権を主張していたが、その時に占拠するまではその一部たりとも支配していなかった。

 カザフスタンとの国境をめぐる争いのように、中国が領有権を主張する地域の一部をすでに支配している場合、交渉上優位な立場にある中国には軍事力を使う理由がほとんどない。 
 ところが中国は現在、東シナ海にある尖閣諸島をまったく支配できていない。 
 尖閣は日本の実効支配下にあるからだ。

 最も重要なのは、
 体制が不安定で、指導部に決意を示すより大きな動機があるときに中国が領有権争いで軍事力を行使してきたという事実である。
 中国からすると、対立する国が中国国内の混乱につけ入ろうとしていると考えられ、弱気で限定的な対抗措置は国民の不満を増幅させかねないという思いもある。

 今日、中国の指導部は、
●.共産党最高指導部内での権力争い、
●.中国共産党の正当性をむしばむ景気の鈍化、
●.慎重に行う必要がある権力の世代交代
など、いくつかの理由で追い込まれていると感じているかもしれない。
 こうした要因により、日本と中国国民に決意を示すために断固たる行動を取ることの価値は高まっているし、
 中国政府は妥協したり、引き下がったと思われるようなことをしづらくなっている。

 日本の尖閣をめぐる動きは、中国側からすると、その苦境に付け込もうとしたものということになる。
 現在のにらみ合いの発端となったのは、石原慎太郎前都知事が4月に行った発表で、東京都が民間人の地権者から尖閣諸島の3島を買い取る計画があるというものだった。
 石原氏の発表は、ここ20年以上の中国政界で最大の混乱と言ってもいい、政治局委員薄熙来氏の要職解任から数日後のことだった。

 経済成長が予想よりもずっと早く減速すると、中国指導部の心配の種は増え、外交姿勢も硬化した。 
 日本の野田佳彦首相は7月、日中戦争の直接の導火線となった1937年の盧溝橋事件の記念日に国が尖閣諸島を購入することになったと発表した。
 最終的に購入契約が結ばれたのは9月で、これも1931年の満州事変の記念日の数日前というタイミングだった。

 尖閣諸島をめぐるにらみ合いの最後の不安定要因として、日中両国が同時に他の島々の領有権問題を抱えているという事実がある。 
 韓国の李明博大統領は最近慣例に逆らって竹島(韓国名:独島)を訪問した。 
 日本も領有権を主張している竹島だが、実効支配をしているのは韓国である。
 一方で中国は、南シナ海でベトナムやフィリピンと領有権争いをしている。
 日中の両政府は、尖閣の領有権争いで勝った国が、その他の島についても勝てるという結論に達するかもしれない。

 歴史は運命ではないし、中国はもう20年以上も領有権争いで軍事力を行使していない。
 したがって尖閣をめぐる対立の拡大は避けられるかもしれないが、現在の状況は危険に満ちている。
 どちらかの政府の艦船で万一死者が出るような事件が起きると、結末が予想できないような本当の危機が始まる可能性もあるのだ。

(筆者のM・テイラー・フラベル氏は米マサチューセッツ工科大学の政治学の准教授で安全保障問題プログラムのメンバー。著書には2008年にプリンストン大学から出版された『Strong Borders, Secure Nation: Cooperation and Conflict in China's Territorial Disputes 』などがある)

記者: M. Taylor Fravel 


 理屈はわかるるが、海戦での勝敗はどちらかというとわかりやすい。
 つまり「勝ったヤツが勝った」というのが明白になる。
 「中国のやり方は負けても勝ったと言い繕う方法」である。
 だが、海戦では海の藻屑と消えた艦艇の数できまる。
 勝敗がわかりやすいし、メデイアの発達した現代では「大本営発表」というのはほとんど信用されない。
 もし負けたらどうするつもりか。
 それを織り込み済みでこの記者はこれを書いているのだろうか。



【中国共産党第18回全国代表大会】


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