2012年10月19日金曜日

「韓米同盟を強化し、領土紛争を未然に防ぐべき」

_


朝鮮日報 記事入力 : 2012/10/19 14:38
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/10/19/2012101901522.html

「韓米同盟を強化し、領土紛争を未然に防ぐべき」
1カ月を超える日中対立、北東アジアの荒波の中で…
韓庸燮・国防大学副総長

 「韓国の次期政権は、韓国の安全保障体制を整備する一方で、日中の次期リーダーに対し、韓中日が協力する北東アジア多国間安全保障体制を説得・推進しなければならない。
 韓国は、両国間に存在する中間者的な立場で、両国に一度も害を及ぼしたことがなく、韓流などソフトパワーを持っているという強みがあり、北東アジアの多国間安全保障体制を主導的に推進できる」

 韓庸燮(ハン・ヨンソプ)国防大学副総長は9月24日、尖閣諸島(中国名:釣魚島)をめぐる最近の日中間の対立を解消し、独島(日本名:竹島)・離於島(中国名:蘇岩礁)での紛争の可能性を低める案として、3カ国の新たなリーダーが多国間安全保障体制の構築に積極的に乗り出すべきだと語った。

 また韓副総長は
 「韓中日自由貿易協定(FTA)により経済共同体を形成することで、相互依存性を強化して平和と共同繁栄の条件をつくり、3カ国間の安全保障上の対立要素を未然に防止することも、別の案として考えられる」
 「独島・離於島問題が対立・衝突に発展することを防止するためには、韓米同盟の持続的強化・発展も極めて重要だ。
 中国とは、相互協力の幅を拡大する戦略が必要だ」
と語った。
 こうした方策を、韓副総長は
 「連米和中戦略」
と名付けた。

-尖閣諸島をめぐる中日の対立が最近のように激化したのはなぜか。

 「中国は、南シナ海の領有権を国家の核心的利益と規定しているが、米国は、南シナ海の領有権をめぐって中国と対立しているベトナム・フィリピンなどと軍事協力を強化してきた。
 東シナ海の尖閣諸島についても、米国は2010年に日米安保条約の範囲に含まれると宣言し『日米』対『中国』という対決構図が形成された。
 今回、日本が尖閣諸島の国有化を決定したため、中国はこれ以上我慢できないと判断したようだ」

-今後、尖閣諸島をめぐる対立はどうなると思うか。

 「当面は、武力衝突が起こる可能性は低い。
 双方とも外交的解決を模索するだろう。
 米国のパネッタ国防長官は、訪日時には日本支持の立場を表明し、また中国を訪問した際には、習近平国家副主席と会談して中国の不満を聞いた上で自制を促した。
 これが影響を及ぼし、双方とも外交的解決の方向に向かっている。
 米国が北東アジアを安定させる役割を果たしているわけだ」

-最初から中国も武力衝突を望んでいたと見るのは難しいのではないか。

 「中国は、対外的には攻勢的な姿を見せているが、中国の海軍力を日本(海上自衛隊)と比較すると、日本の方が上回っている。
 日本はイージス艦6隻を保有しており、ミサイル攻撃能力や先端指揮統制(C4I)能力の面で中国より優れているため、実際に武力衝突にまで発展するのは考えにくい」

 「また、中国は民族主義の感情を利用しているが、反日デモを無制限に許すと、逆に国内政治が不安定になる可能性がある。
 日本の野田政権も、あまりに右傾化が進めば、自民党に再び政権を奪われる可能性があることを懸念したのだろう」

-長期的に見て、尖閣をめぐる日中の武力衝突の可能性はどうか。

 「長期的には、中国の国力拡大と海・空軍力増強を考慮すると、尖閣をめぐる日中間の武力衝突の可能性は今より高くなるかもしれない。
 2020年ごろになれば、中国海軍の影響圏はグアム-サイパン-パラオ諸島を結ぶ、いわゆる第2列島線にまで拡大する。
 25年ごろになると、中国の経済力が米国を上回る可能性もある」

-米国は、尖閣諸島が日米安保条約の適用対象だと語ったが、実際に有事の際、米軍はどの程度のレベルで介入するだろうか。

 「もし日中が実際に武力衝突を起こし、尖閣諸島が中国の手に渡ったら、有事の際の台湾防衛も難しくなる。
 このため米国は、積極的に介入する可能性が極めて高い。
 とはいえ現実的には、そうした事態を防止することに力を注ぐだろう。
 中国も、経済成長を続けるためには、危機の防止が重要だという認識を持っている。
 米中両国間での軍首脳部の交流、ホットライン構築、G2(主要2カ国)戦略的経済対話などがその例だ」

-このところ中国は積極的に出てくるケースが多いが、それはなぜか。

 「トウ小平氏の時代には韜光養晦(とうようこうかい=才能を隠して表に出さないという意味)の方針だったが、江沢民氏の時代を経て胡錦濤氏の時代になると、中国の経済力は日本を上回り、日本に対しては“言うべきことは言う”という姿勢に転換した。
 今では、有所作為(積極的に参加してやりたいようにやる)という姿勢を取っており、南シナ海・東シナ海などで領土・領海や主権を守ろうとする行動もその例だ」

-中国の戦略が変わったということか。

 「中国の軍事戦略は以前に比べ、積極防御戦略に変わった。
 G2経済大国としての自信を持ち、中華民族主義が台頭している。
 中国は、2025年までを中華民族の大復興期と宣言している。
 清の時代に当たる1820年代に、中国は世界のGDP(国内総生産)の32%を占めていたことがあり、そうした過去の栄光を再現したいというわけだ。
 地上軍大国から海洋勢力への膨張を目指しており、2025年になれば二つの空母機動部隊を配置すると見込まれている」

-今回、中国に完全に押された日本が、これを契機に軍備増強に一層拍車を掛けるという懸念も出ている。

 「日本はこれまで、防衛庁を防衛省に昇格させ、自衛隊が本格的な軍隊の役割を果たせるようにと努力してきた。
 昨年の日本の防衛費は560億ドル(現在のレートで約4兆4000億円)程度だったが、今回の事態に刺激され、今後は米国とのミサイル防衛(MD)、先端C4Iシステム、第5世代ステルス機F35の配備などにより、中国に対する海・空軍力の質的優位を維持し続けようとするだろう」

-尖閣諸島をめぐる対立で中国が示したような行動を、日本が韓国の独島で示す可能性も懸念されるが。

 「日本は、独島に対しては日中間の対立ほど強硬ではないが、問題を提起し続ける可能性はある。
 重要なのは米国の役割で、韓日どちらも米国の同盟国であることから、米国は両国間の対立の自制を求めてきた。
 韓米同盟が弱体化し、米国の国力が中国より弱くなれば、日本が独島に対して一層強硬な態度を取る可能性は高くなる。
 これに対し、確固とした韓米同盟が続けば、日本は過度に強硬な態度は取り難いだろう」

-韓日間で独島をめぐる武力衝突が発生した場合、米国はどういう態度を取ると考えられるか。

 「米国の基本的立場は、領土紛争を平和的に解決せよというもので、韓日の間では中立的立場を取っている。
 米国は、韓日の間で実際に衝突が発生しないよう、さまざまな手段を行使するだろう。
 実際には独島問題が激化し韓日関係が悪化したのは最近の話で、哨戒艦『天安』爆沈事件・延坪島砲撃事件の際には、韓米日は緊密に協力し、中国側がけん制するほどだった。
 日本が独島問題をこじらせ、韓米日の協力を弱体化させたという側面がある」

-独島問題について、日本にはどのように対応すべきか。

 「韓国が中国に対し、大国にふさわしい姿勢と役割を要求しているように、日本が北東アジアで責任ある大国の役割を果たせるよう、日本に歴史認識の改善を求めていかなければならない。
 日本の歴史認識は、第2次大戦後のサンフランシスコ講和条約の水準にとどまっており、現代化・世界化する必要がある」

-中国との離於島問題はどうか。

 「離於島は、韓国が既に2003年に海洋科学基地を建設し運営している。
 離於島に対する実効支配を強化する措置を取るべきだ。
 海図上の表記、海底地形の探査、海洋環境の調査、学術誌への寄稿など、離於島の領有権に対する国際法的根拠を蓄積し続けなければならない。
 また、外交通商部(省に相当、以下同じ)・国土海洋部・国防部の間で情報共有および協力体制を構築し、今後完成する済州基地などを活用して、持続的かつ速やかな巡察・監視能力を確保すべきだろう。
 さらに現在、離於島上空は日本の防空識別圏に入っているため、この点もまた、韓国の防空識別圏内に含められるよう努力すべきだ」

-今回の尖閣問題が韓国に与える教訓は何か。

 「尖閣をめぐる対立が小康状態になったのには、両国に自制を促した米国の役割が大きかったと思う。
 韓日間の独島、韓中間の離於島で問題が起こることを防止するためには、韓米同盟の持続的強化・発展が極めて重要だ。
 歴史的に見ると、漢・清など中国が大陸で統一を果たした時期に韓国を侵略してきた。
 今、中国は歴史上5度目の統一大国となっているが、中国の脅威を防御するためには、韓米同盟が極めて重要ということだ」

 「韓中間でも、相互の信頼構築や戦略対話を発展させ、戦略的協力パートナー関係を構築しなければならない。
 これが、いわゆる“連米和中”戦略だ。
 武力衝突の可能性に備えた海・空軍力の増強も必要だ」

■韓国も海・空軍力を増強すべき…国防費をGDP3%の水準に

-海・空軍力を増強すべきとのことだが、韓国が日中と同水準の軍事力を備えることはできないのではないか。

 「海軍力の中では、隠密性に優れ戦略兵器として活用できる潜水艦が重要だ。
 中国は70隻の潜水艦を保有しており、日本は潜水艦を18隻から22隻に増やそうとしている。
 空軍の場合、次世代戦闘機はもちろん、空中給油機が必要だ」

-最近、国防部は「国防改革基本計画2012-30」「国防中期計画2013-17」を発表したが、海・空軍力の増強計画は不十分だという指摘が出ている。

 「これらの計画は、韓国軍の合同戦力システムを発展させ、15年に戦時作戦統制権が在韓米軍から韓国軍に移管された後、韓国軍の主導による韓国防衛能力を育成するのが目標だ。
 これまで海・空軍戦力は、巨額の費用が掛かるという理由から、中期計画で遅延が続いてきた。
 だが、北東アジアで領有権紛争の可能性や安全保障の不確実性が高まっていることを踏まえ、今は国防費を増やさなければならない。
 李明博(イ・ミョンバク)政権時代、国防予算は年平均5%程度伸びていた。
 次の政権では、現在GDP2.8%の水準にある国防費を、3%の水準にまで増やすべきだ。
 巨額の費用が掛かる戦力増強事業を、国家的に支えるシステムにしていかなければならない」

■韓庸燮・国防大学副総長とは
 約30年にわたり韓半島(朝鮮半島)の非核化や平和体制の構築、韓米同盟の発展や北東アジア安全保障協力の分野で教育・研究を行ってきた、韓国軍内の中心的国際政治学者。
 最近は『米中競争時代の東北亜平和論』などの著書で、不確実な北東アジア情勢での韓国の将来的な国防政策の発展方向を提示した。
 米国ハーバード大学の修士過程を経て、ランド研究所大学院で安全保障政策学の博士号を取得。国防大学安保問題研究所長、韓国平和学会会長などを歴任した。




【中国共産党第18回全国代表大会】


_