2012年10月14日日曜日

中国との対立で日本の経済成長に暗雲

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ウォールストリートジャーナル 2012年 10月 13日  14:40 JST
http://jp.wsj.com/World/China/node_529015?mod=WSJFeatures

中国との対立で日本の経済成長に暗雲

 沖縄県・尖閣諸島(中国名:釣魚島)を巡る日中間の対立が日本経済、アジア地域の成長、多国籍企業のグローバル・サプライチェーンに対する新たな脅威として浮上しつつある。

 日本政府は12日、景気の基調判断を3カ月連続で引き下げ、対外経済環境を巡る不確実性が高い理由として、初めて中国を名指しした。

 日中間の対立がどれくらい長期化するかは不透明で、長期的な影響を評価するのは難しい。
 しかし、日中間の貿易の停滞がさまざまな分野に広がれば、日本の経済成長、中国国内の雇用、自動車や電子部品のグローバル・サプライチェーンなどありとあらゆるものに影響が及ぶ可能性がある、と専門家は指摘している。

  「(日中間の対立によって)経済面に深刻な亀裂が生じ始めている。
  中国と日本は地域貿易の要だ」
とIHSグローバル・インサイトのアジア太平洋地区担当チーフエコノミスト、ラジブ・ビスワス氏は述べた。

 影響は韓国など貿易に依存している他のアジア諸国にも広がる可能性がある。
 さらには、中国製製品の世界的な供給にも余波が及ぶこともある。
 その結果、サプライチェーンに障害が生じ、世界的にインフレが高進する可能性もある。

 野村証券のアジア担当チーフエコノミスト、ロブ・サバラマン氏は
 「アジア域内での日中間の貿易が滞れば、世界中の多国籍企業に大きな影響が及ぶだろう。
 地球の裏側でも完成品の不足や価格上昇が発生しかねない」
と話す。
 「加工や組み立ての多くが中国で行われており、日本はそのための材料の多くを供給している」
とサバラマン氏は指摘した。

 日本政府による尖閣諸島の国有化をきっかけに、中国の消費者は日系ブランドを避けている。 
 上海では日本関係の輸出入品の通関に遅れが発生した。

 これまでで最も大きな影響が出ているのが中国での日本車の販売と日中間の旅行需要だ。
 日系自動車メーカーの9月の中国での販売台数は前年同月の約半分程度まで落ち込んだ。
 今月初めの中国の大型連休中には、日系航空会社の座席予約や日本のホテルの宿泊予約が数千の単位でキャンセルされた。

 米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は今月3日に公表したレポートの中で、地政学的な不確実性が高まった結果、東アジア地域の投資と国際貿易活動に影響が及ぶ可能性があると述べた。

 例えば、日系自動車メーカーが苦戦する陰で、韓国メーカーはその恩恵にあずかっている。
 しかも、韓国も竹島(韓国名:独島)の領有権を巡って日本と対立している。
 それでも、韓国は中国市場で苦境に陥っている日本の様子を喜んで見ているわけではない、と韓国外交通商省の朴泰鎬通商交渉本部長は述べた。
 朴氏は11日、記者団に対し、日中韓の貿易関係は非常に重要だとして
 「目には見えないが、われわれは相互につながっており、(日中間の対立は)3カ国の経済協力に打撃を与えるだろう」
と述べた。

 中国政府は今週、日本で開催されている国際通貨基金(IMF)・世界銀行の年次総会への中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁と謝旭人財政相の派遣を見送り、日本への反発を強めている。

 ラガルドIMF専務理事は11日、記者団に対し、「対立が長期的なものであろうとも、平和的かつ迅速に解決されることを期待している」と述べた。また、ラガルド氏は「この地域の経済プレーヤーとパートナーは世界経済にとって極めて重要である」と述べた。

 日本側は尖閣諸島を巡る外交的な対立と経済関係を切り離そうとしている。
 前原誠司経済財政担当相は11日、ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューで、
 「問題をしっかり解決するなかで、経済的なマイナス要因にできるだけならないような努力をしていくということが大事だと思う」
と述べた。
 前原氏はまた、日本政府による尖閣諸島の国有化を支持する一方で、長期的には日中友好関係を育てることは重要だと述べた。

 しかし、中国側は経済や外交関係よりも領土の主権を優先するとのシグナルを送っている。
 中国共産党の指導部はこうした問題については一枚岩で、世論を煽る傾向にある。
 香港のシンクタンク、ファン・グローバル・インスティテュートのリサーチ・ディレクター、肖耿氏は
 「(中国側は)主張を通すためだけに多くを進んで犠牲にする
と述べた。

 肖氏は強硬姿勢を維持するための中国政府の能力は「ほぼ無尽蔵」とみる。
 しかし、中国では来月の共産党大会で行われる10年に1度の指導部交代に注目が集まり、反日感情はかき消されてしまって、共産党大会後は緊張が急速に緩和すると、肖氏は予想している。

 エコノミストによると、現時点で日本企業と日本経済が被っている影響はまだそれほど大きくないが、日本のほうが中国よりも失うものは大きい。
 S&Pの推計によると、日本の対中輸出が1年で30%減少すれば、日本の名目国内総生産(GDP)は0.6%減少するという。
 S&Pは現在、2012年の日本の実質経済成長率は2.0%、2013年は1.6%と予想している。

 日系企業が中国への投資について再評価を行ったり、削減を検討する可能性もある。

 シティ・リサーチ(香港)の中国担当上級エコノミスト、Shuang Ding氏は「日本が既に投入した対外直接投資(FDI)を削減したり引き揚げたりした場合、影響はさらに広がる。直接影響を受けるのは雇用だ」と指摘した。

 Ding氏は日系企業が雇用している中国人従業員の数は500万人に上っている可能性があるとしているが、それよりも大幅に少ない数字を示す推計もある。
 キャピタル・エコノミクスが2011年3月に公表したレポートは日本の経済産業省の統計を引用し、日系企業による中国人の雇用は150万人とした。
 中国では、雇用が社会的な安定と緊密に結びついており、日系企業は重要な雇用主だ。

 元トヨタ自動車専務で、現在は日本の中小企業基盤整備公社の理事長を務める高田坦史氏は、日本の企業は中国市場を無視できず、中国も日本について同じように考えていると思う、と述べた。
 日中間の絆を断ち切ることは不可能だと高田氏は指摘した。

記者: CHESTER DAWSON in Tokyo and JAMES T. AREDDY in Shanghai 




日本経済新聞 2012/10/13 22:10
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1304B_T11C12A0FF8000/

日中経済冷却が世界のリスクに 貿易総額、9月は4.5%減

 日本と中国の経済関係の冷え込みが世界経済の新たなリスクとなってきた。
 13日発表の中国の貿易統計で、9月の日中間の輸出入を合計した貿易総額は前年同月比4.5%減となり4カ月連続で縮小した。
 中国経済の減速に加え尖閣諸島を巡る緊張が影を落とし、日本からの輸入は1割減少。
 日中関係の「政凍経冷」が一段と鮮明になる。

 日中貿易はリーマン・ショック後の2009年に前年比14%減と落ち込んだが、その後は10年に30%増、11年も15%増と拡大した。
 日本にとって中国は最大の貿易相手国。
 中国にとっても日本は欧州連合(EU)、米国、東南アジア諸国連合(ASEAN)に続く第4位の貿易相手だ。

 だが、今年は中国経済の減速で日中貿易が鈍化傾向にあり、そこに尖閣諸島を巡る日中関係の悪化が追い打ちをかける。
 1~9月の貿易総額は前年同期比1.8%減と1~8月(同1.4%減)より減少幅が拡大した。

 9月の中国の日本からの輸入は前年同月比9.6%減と、8月から2カ月連続で1割前後の減少が続く。
 日本への輸出の伸びも2%台に低迷。
 9月の大規模な反日デモ以降、自動車や家電など日本製品の不買運動が広がっており、日本からの部品などの輸入が落ち込んでいるもようだ。

 特に9月は中国の全体の輸出が前年同月比9.9%増え、輸入も2.4%増と低水準ながら8月の減少から増加に転じただけに、対日貿易の低迷が目立つ。中国市場での逆風は日本企業にとって打撃だが、中国経済も無傷ではすまない。

 中国の9月の輸出が1割近く伸びたのは、中国政府が融資拡充など輸出てこ入れ策を講じ、ASEANなど新興市場向けの輸出が堅調だったほか、クリスマス商戦を控えた米国からの受注も増えたためだ。
 スマートフォン(高機能携帯電話)の需要拡大も追い風だ。

 もっとも、10月初めの国慶節(建国記念日)の大型連休を前に駆け込み的に輸出入が増えた面があるうえ、最大の貿易相手EUとの貿易は1~9月に前年同期比2.7%減と低迷が続く。世界経済の先行き不安はなお晴れず、外需の鈍化が中国の輸出の足かせである状況に変わりはない。

 今後さらに日本との貿易が滞れば、中国で日本製品の製造にかかわる多くの中国企業の生産や雇用に悪影響が及び、減速から抜け出す時期を探る中国経済の足を一段と引っ張りかねない。
 世界第2位、3位の経済大国である日中間の緊張緩和への道筋が見えない状態は、世界経済の下押しリスクを増す要因となりつつある。




CNNニュース 2012.10.12 Fri posted at 17:00 JST
http://www.cnn.co.jp/business/35023002.html?tag=cbox;business

中国による日本車ボイコット ツケは中国に跳ね返る?

 香港(CNNMoney) 尖閣諸島(中国名・釣魚島)の領有権問題をめぐって中国で広がっている日本車の不買運動のつけは、日本の自動車メーカーだけでなく、中国の工場やディーラーにも及ぶと専門家が予想している。
 中国では9月の日本車販売が35~50%の落ち込みを記録し、トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車、三菱自動車、マツダの各社とも打撃を受けた。
 しかし、中国で販売される日本車と製造に使われる部品の大部分は、中国の工場で、中国の労働者が生産している。
 完成した車を扱うディーラーも多くは中国人が経営し、営業担当者も中国人だ。
 香港を拠点とする投資会社のアナリスト、ジャネット・ルイス氏は
 「中国で日本ブランド車の販売が減少すれば、実際に傷つくのは中国企業だ」
と指摘する。
 中国に与える影響の大きさを数値化するのは難しいが、販売減少の影響は事実上、中国のサプライチェーン全体に及ぶとルイス氏はみる。
 中国政府が直接的、間接的に支援している大規模な自動車工場より、経営基盤の弱い民間の部品メーカーやディーラーの方が大きな痛手を被るのは必至だ。
 上海で自動車業界のコンサルティングを営むジョン・ゼン氏は、最も大きな影響を受けるのはディーラーだと予想、
 「大都市のディーラーはただでさえ苦戦している」
 多くの場合、既に自前で自動車を購入しており、もしそれが売れなければ、トヨタやホンダではなく、ディーラーがつけを負うことになる」
と指摘する。
 この状況がいつまで続くかは政治状況にもよるが、
 「もしこのままの状態が続けば、中国経済のより広範な分野で痛みを被り、長期的に大きな影響が及ぶ可能性もある」
とゼン氏は話している。





【中国共産党第18回全国代表大会】


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